公開日 2022年02月21日

生物資源科学部EMSニュース2022年2月号

 

 最近のガソリン価格の上昇は私たちの生活を直撃しており、皆さんの関心も高いのではないかと思います。この価格の上昇は原油価格の高騰によるもので、先ごろWTI原油先物価格は1バレル95ドルを突破し、今後の国際情勢次第では100ドルを超えることもありうる状況になってきました。原油価格の上昇に連動する形で天然ガスや石炭の価格も上昇していて、エネルギー価格の高止まりが懸念されています。これまでEMS対応委員会でもエネルギー使用量や電気代について注力してきましたが、今後より一層皆さんのご協力をお願いすることになるかと思います。
 https://nikkei225jp.com/oil/
 
 このような化石燃料価格の上昇には複雑な背景があるのですが、その一つの要因として、「パリ協定」の発効以降、化石燃料由来の二酸化炭素の排出量を減らし、脱炭素社会の実現に向けた世界的な動きが活発化していることが挙げられます。これにより産油国は当面の利益の確保のために石油の生産量を抑制しています。加えて、コロナ禍からの回復過程での経済復興による需要の上昇やロシアとウクライナによる政情不安定化が最近の価格高騰に拍車をかけています。
 
 EUでは先ごろ原子力発電を温暖化対策に役立つクリーンエネルギーとして推進していく方向性を打ち出しました。近年の原子力発電は「小型モジュール炉」の開発が主流になっており、安全性と低コスト化を実現しうる技術といわれています。火力発電においても排出される二酸化炭素を分離・回収して、地中深くに圧入し、固定化・貯留する技術が普及し始めています。
 
 このようにエネルギーをめぐる問題は近年急速に変化しており、これらへの対応が未来への分水嶺となるのかもしれません。“ミネルバのフクロウは迫りくる黄昏に飛び立つ”、ドイツの哲学者ヘーゲルが「法の哲学」の序文で述べた言葉です。様々な解釈がありますが、ローマ神話の知恵と芸術の守護神であるミネルバは古い知恵が黄昏を迎えたとき、フクロウを飛ばせ、その目を通じて古い知恵を俯瞰して総括し、そして新しい知恵を開くためにフクロウは飛び立ちました。近年はまさにその時なのかもしれません。

島根大学生物資源科学部環境マネジメントシステム対応委員会委員長 松本真悟

 

 

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