公開日 2025年12月15日

生物資源科学部EMSニュース2025年12月号

◎山陰地域の原材料によるペレット堆肥で有機サツマイモ栽培

 島根大学と島根県農業協同組合(JAしまね)は2023年2月に包括的連携協定を締結しました。本協定には農業振興、共同研究等の推進、教育及び人材育成、地域社会への貢献が含まれています。生物資源科学部では、農業振興として山陰地域から発生した畜産廃棄物から製造したペレット堆肥を使用し、「みどり戦略※」に対応できるイネ、ネギ、サツマイモの有機栽培に関する共同研究に取り組んできました。
 このうち、足立文彦助教・門脇正行准教授が担当するサツマイモ栽培では、標高720mの冷涼な気象条件(夏期は北海道南部に相当)にある奥出雲町三井野で、ペレット堆肥※を使用した場合の収量と品質を評価しています。ペレット堆肥の原材料となる山陰地域から排出される牛ふんや鶏糞などが適切な配合となるように松本真悟教授が成分分析と助言を行い、JAしまねによりペレット堆肥の試作と改良が行われてきました。本共同研究では低温条件では有機質肥料の分解が遅れてサツマイモの収量が低下する問題を解決するために、有機由来のカリウム成分を強化することで収量性を向上させる改善を行いました。その結果、このペレット堆肥を利用したサツマイモの収量は化成肥料栽培の収量に匹敵し、食味品質は最も高くなりました。
 従来、作業性が悪かった畜産廃棄物を効率的に散布することで化学肥料の使用量が低減できるとともに、成分強化による作物への肥効改善により、食料生産と持続性が両立できるようになりました。さらに、本学のSDGs活動の一部として地域資源の循環型活用システムの構築に貢献することが期待されます。なお、本件は関係企業と島根大学とで知財の共同出願を計画中です。

 

《上記に関連する情報につきましては、以下のURLよりご確認いただけます》
○JAしまね雲南地区本部 「しまねびより」 2025年6月号 営農News03
https://ja-shimane.jp/img/tiku/unnan/koho/2025-06unnan.pdf

○島根県農業協同組合と包括的協定締結を締結
https://www.shimane-u.ac.jp/docs/2023030900032/


※ 「みどり戦略」とは、農林水産省が2021年に策定した「みどりの食料システム戦略」の略称です。この戦略は、環境負荷を低減しつつ、食料生産と持続可能性の両立を目指す政策です。気候変動などの課題に対応するため、2050年までに「CO2排出量実質ゼロ」「化学農薬・化学肥料の使用量削減」「有機農業の拡大」などの目標を掲げています。

※ ペレット堆肥とは、牛ふんや鶏ふんなどの地域から排出される有機質資材に、植物栄養成分比率が適切になるように各種の有機質を混ぜ合わせ、JAしまね安来地区本部のペレット加工機で成形したものです。堆肥を圃場へ散布する際にはマニアスプレッダーなどの大型機械が必要になることが一般的ですが、ペレット化することで、手播きや動力散布機、ブロードキャスタなどの簡易な散布方法が利用可能になります。これにより、中山間地の狭い圃場でも堆肥の利用が可能になるという利点があります。


 

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